トランスジェンダー。性同一性障害。彼は生まれ持った男の体を女に変えたいと。このことで非常に思い悩んでいる。あと6ヶ月で40歳になる。もし女の体になれないのなら自分は生きている意味はないから死ぬしかない。どうやって死ぬか計画も覚悟も出来ていると。
MTF 男から女へ。FTM女から男へ。願望と実際の違いに思い悩む人は少なくない。主に体が変化する思春期に診断される人が多い。もちろんルーカスのように壮年期の場合もある。しかし身体が出来上がっているので、変換は難しくなることも。
ルーカスの二つ上の兄は早くに診断され薬と手術でMTFを遂げた。しかしその後も思い悩むことが多いとか。それがルーカスを不安にさせる。ルーカスは有名化粧品店で働いた経歴もあり、自分のことをメークアップアーティストと呼ぶ。鍵付きのクローゼットには山ほどの女装品があり女装を楽しむのだが、最近近所の男性3人から暴行を受けそれもままならいと。女性に変換するのなら美しい女になりたい。フランケンシュタインにはなりたくない。手術にかかる費用を負担出来ない。家族や友達に打ち明けたらなんと言われるか怖い。彼の悩みは尽きない。そして悩みが乗じて兄からホルモン剤を分けてもらい飲み出していると。
私にとっても始めてのケース。何から始めて良いかわからない。2週間時間をくれと頼んだ。その間に宿題をしてどこに紹介するのが一番なのか、プライマリーケア提供者としての役割などを調べるからと。その間ホルモン治療に必要な血液検査に行ってもらうことで今回の治療は終了。
最後にカルテの性別を男性とするからその他とするか、希望を聞いた。彼はとても嬉しそうにその他にして欲しいと言った。その笑顔はその日一番だった。その分どれだけ彼がジェンダーアイデンティティーで悩み続けたのかを察した私だった。

朝晩冷え込むようになりました。