走るナースプラクティショナー

診断も治療もできる資格を持ち、カナダAB州で薬物依存、メンタルヘルス、ホームレス、貧困層の方の診療をしています。

穏やかな

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土曜日勤務を始めて2ヶ月が経とうとしている。先日数人の看護師から言われた。

 

美加がクリニックにいてくれると安心して働ける。

 

診察は時間通りだし、その間に他の患者も診てくれるから、患者も私たちも嬉しい。

 

以前は土曜勤務が憂鬱だったけど、今は土曜勤務だとホッとする。

 

土曜勤務をしてくれてありがとう〜

 

と。

 

ま、嬉しい言葉。そう言われると私にとっても励みになり、ますます丁寧な診察に力が入ります。このような事をポジティブフィードバックと言います。職場の潤滑油になり仕事効率が上がります。

 

ポジティブフィードバックをしていますか? 

 

冒頭写真: 3月末とは思えない絶景と新雪。膝までの深さのパウを楽しみました〜

様々な道

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同僚が嬉しそうにもうすぐ卒業! と話す。修士号のこと。看護師だから看護の修士号と思い込みそうになりますが、彼女の場合カウンセリング。

 

看護の仕事は好きだけどグループカウンセリングの業務に関わって、興味が湧き、実習で確実に自分の未来はこれだ! と感じたと言う。

 

もう1人同じ道を歩む同僚もいる。

 

同僚の医師は元看護師。

 

何歳になっても修学と就職の扉が開いている国。1つにこだわらず、進む道も様々。

 

それとは対照的に就職に年齢制限を設ける日本。少子化が進み労働不足が深刻化するのだから、この文化もどうにかするべきと思う今日このごろ。

 

冒頭写真: 3月末となりようやく冬らしい景色へ

 

在宅での死を支えるシステム 最終回

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カナダと日本の在宅医療のスケールの違いがわかったと思います。

 

カナダの医療は州政府によって行われていてます。保健機構は急性期病院、長期療養型施設、在宅医療など全てを行なっています。これが大きなスケールを可能にさせます。必要な部署を作り必要な人員配置をする。統一されたケアも作りやすいのです。

 

このシリーズの始めに私がホスピス緩和ケアで働いていた時はBC州の緩和ケアの転換期でした、と書きました。在宅での死を支えるためのシステム作りが必要と立ち上がった緩和ケアのCNSたち。同じ大学院卒業の先輩CNSが中心となりデザインをして作り上げたものです。

 

私が働いていた保健機構で始まり、BC州の全ての保健機構に広まり、そしてカナダ全土へ広がりました。先に述べたCNSは連邦政府から功労賞を受賞したほどです。もちろん緩和医との協働や大学側の協働もありました。しかし原動力が看護師って凄くないですか? そのCNSを中心に各地の緩和ケアCNSが協力していてキラキラスターみたいで、ホントカッコよかった。実はそれに憧れて大学院行きを決めたくらいですから(正確にはそのCNSに背中を押されて決めた)。

 

疾病だけではない。在宅という生活の物質と人的資源を理解できる職種ならではの偉業だと思っていました。

 

残念ながら日本のものは開業医や訪問看護ステーションに丸投げ。俯瞰的な視点から全体像を理解してデザインできる資源が限られていて、その上診療報酬で振子のように変わるケア。しかし「何とかしたい」と言う医療者の情熱で持っているような状態。医療職の安全の保障もなく、現に被害を受けて死亡する人もいるぐらい。医師に課せられる業務は多く、働きすぎ改革はどこ吹く風。医療職の犠牲の上に成り立っている。

 

何度も書いていますが、日本の医療は病院を中心に発展してきました。しかし他国では随分前からこれでは継続が難しいと予防医療や在宅医療の充実を図ってきました。その出遅れが日本にある。その上にあるのが世界で類のない人口減少と加速する高齢化。この状況にも、その場しのぎの政策で対応しようとする政府の姿。

 

しわ寄せは国民と現場で働いている医療者に寄せられています。目先のことよりも未来へ。一部の有権者のための政治ではなく国民の為の政治を。根本的な改革が必要だと外から見ていて感じます。

 

シリーズ終わり

在宅での死を支えるシステム その9

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在宅看護、訪問看護は緩和ケアだけのものではありません。訪問看護は緩和ケアの他に慢性期と急性期がありました。慢性期は長期に渡るケースマネージメントです。ケアマネージャーが介護量や医師との連絡を取り在宅で長期的に暮らせるように調整します。

 

急性期は術後管理(創傷の管理やドレーン管理を含む)。ドレーン(排液チューブとバック)が入ったまま退院も日常的です。褥瘡管理、胃瘻や膀胱瘻のようなチューブ管理、在宅点滴抗生剤投与もあります。その他にアンビュレートリークリニックを持っていて、歩行、通院できる人が、以上の処置をクリニックで受けられるようになっています。看護師だけで回しているクリニックです。

 

ステーションには看護師の他に、薬剤師、理学療法士、作業療法士、呼吸療法士、WOC、在宅CNE、緩和ケアCRN、管理者、医療秘書と続きます。スケールの差を感じますか? 

 

また病院と在宅の間を取持つ在宅リエイゾン看護師は病院に所属し、在宅退院が安全に行われるかどうかのアセスメントを行います。

 

先日書いたように、全ての業務は朝8時から夕方5時まで。電話対応は夜8時まで。緩和に限りCNSのオンコール体制があります。

 

ではその他の患者は? 州の制度で24時間のホットラインがあります。ホットラインでは看護師が多くのアルゴリズムを使って対応します。このホットライン、看護師は24時間ですが、日中は薬剤師、栄養士も対応しています。州民であれば誰でも利用できるラインで訪問看護に受入時に患者と家族に利用を必ず説明するホットラインです。

 

無用な救急医療の利用を抑えようとする姿勢が見えますか? 急性期病院は病気中の病気の人が行くところ。その他は在宅で、と厚いサポートが敷かれているのが日本との差です。

 

続く

 

冒頭写真: ボウ滝。暖冬だな〜氷が随分少ない

在宅での死を支えるシステム その8

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看護師の役割が大きい事を今まで書いてきました。

 

その3で書いたようにカナダの看護師のコンピテンシーは高い。ブログで何度も書いていますが、教育、免許更新、レギュレーションでその水準を医療の発展に伴い上げ続け、質を担保しています。

 

その上に在宅看護のコンピテンシーが立ち、その上に緩和ケアの専門性は立ちます。

 

在宅に雇われれば誰でも緩和ケアができるのではなく、緩和ケア専門のオリエンテーション教育は6週間あります。その上に5日間続く全医療職対象の緩和ケアのワークショップへの参加も推奨されます。私は在宅を始める前に既にホスピスや緩和ケア病棟、コンサルチームで認定教育を済ませ認定を持ち、ワークショップも済ませていたので免除となりましたが、新人在宅看護師が緩和ケアが1人でできるようになるまでには時間と教育が課せられています。

 

その上、ラウンドは毎週、コンサルチームを交えてあるし、保健機構の緩和ケアのワークショップも度々開催され、参加できます。こうやってどこに住んでいても同じような緩和ケアが受けられるように職員をサポートするシステムも確立されています。

 

続く

 

冒頭写真: 長女との冬ロッキー旅行は少し贅沢をした場所に泊まりました。夜は暖炉に火を入れ長話をして

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デッキで美味しい空気を吸い

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長湯をしました(今の仮の宮はシャワーのみなので超嬉しい)。

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朝夕食も大満足。

在宅で死を支えるシステム その7

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本人の意向を叶えたいと家族は頑張ります。しかし長期戦になれば疲労もたまるし、家族の健康も危うくなります。

 

レスパイトケア。短期間ホスピスへ入院することもできます。

 

介護士訪問は1日に分三や分四回で来ることがほとんどですが、買物や用事の為に集約して4時間来てもらい、その間に家族が出かけるようにすることもありました。その辺の調整をするのも看護師です。

 

依頼をすれば薬局が薬の配達もしてくれます。いかがですか? 日本と似ていますか? それとも随分異なりますか? 

 

このような在宅ケアを受けるためには州のパリアティブベネフィットの書類が記入されていなければなりません。

 

用紙はこちら

 

これは予後が6ヶ月以下となり、医師かNPによる診断と本人もしくは家族が同意していなければなりません。

 

予後はあくまで予測なので6ヶ月以上生きている場合もあります。よって12ヶ月経つと再申請しなければなりません。

 

この用紙は家庭医、がんセンター、で準備されるときもありますが、緩和ケアのコンサルテーションチームに依頼される場合が多かった。私がコンサルにいた時は、急性期病院からの依頼が一番多かったと記憶しています。特に救急、ICUと外科病棟。丁寧にカルテをレビューし、患者のアセスメントをして、本人家族と話すこともあれば、家族会議を通して話したり、コンサルチームで働く看護師にとって重要な役割でした。既に記入されている場合は、ホスピスへの転院か在宅か、それとも今まで住んでいた長期療養型施設へ戻るのか、その方向性を本人家族と話し合いながら決めていくのも重要な仕事でした。

 

もちろん複雑なケースはチーム内の緩和医やSWと相談したり、緩和CNSに相談したり、即決できる時もあれば時間を要する時も。病院の担当医は予後の納得をしていても、説明が苦手、、、みたいな時に役立つのがコンサルチームでした。おっと話が逸れてしまいましたね。

 

次回は本題に戻ります。

 

続く

 

ルイーズ湖の水は麓へ〜

在宅での死を支えるシステム その6

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オンコールについて書きましょう。訪問看護の日勤の就業時間は朝8時から5時まで。準夜勤は昼の12時から8時まで。私が働いていたステーションはとても大きかったので看護師だけで日勤の数は30人ぐらいいました。しかし準夜勤をするのは1人です。訪問の全ての業務は夕方5時までに終了し、5時から8時は電話対応になっていました。看護師の安全を考慮しているからです。暗闇の訪問は危険を伴います。どうしても訪問を夜間にしなければならない場合は、夜間訪問プロトコールがあり、それで看護師の安全を担保していました。しかしこれにはよほどの理由がなければ使わないものでした。

 

夜8時から朝8時は緩和ケアCNSのオンコール体制です。地域に1人ずつ存在する緩和ケアCNS。州全体の緩和ケアが当番制で回していました。そうすることで個人の負担を減らしていました。CNSは週末や休日でない限り翌日出勤が待っていますから。

 

訪問なのに訪問をせずに電話対応は問題なのでは? と思う人もいるかもしれません。

 

電話対応で対応できるように普段からのアセスメントと教育がここにも活かされています。在宅死が迎えられる家族の受皿も普段からアセスメントされているからです。

 

それに看護師の安全は第1です。その範囲内で在宅死が安全に、且つ家族が許容できる範囲で迎えられない場合は早くからホスピス入院の話が始まります。

 

夜間の看護師の数を増やす案はどうでしょうか。しかしそうするとコストが高くなります。それに在宅はその対象者が拡散していて(点と点の移動距離が長い)、同時に複数の人がクライシスになる可能性が否定できない環境なのです。最悪の状況が基準ラインとなります。

 

因みに、金銭的余裕のある人は訪問看護とは別にプライベートでエージェント看護師を雇うこともあります。それは本人と家族の自由です。

 

続く

冒頭写真: 凍ったルイーズ湖を歩くことを楽しみにしていた長女。雨模様で断念。