走るナースプラクティショナー

診断も治療もできる資格を持ち、カナダAB州で薬物依存、メンタルヘルス、ホームレス、貧困層の方の診療をしています。

一時の案楽

貴方の患者になって本当に良かった、と彼女は電話の向こうで言う。こうやって声を聞いている間だけでも痛みから解放されると。

彼女は実際の年齢よりずっと年上に見える。苦労に次ぐ苦労は人間を老けさせる。骨はボロボロで圧迫骨折が数カ所。骨粗鬆症のお薬を服用して一年。何も変わらない。圧迫骨折はますます悪化している。

手術の適応になるかどうか境界線あたりだ。何せ糖尿病に心臓、腎臓、肝臓もかなり悪い。現在のエビデンスではコルセットもファセット注射も手術も効くかも知れない程度の実績だ。

局所の痛みに悩む彼女の生活可動域が落ちてきている。痛み止めも使えるものも全て使っている。マッサージにホットピローも。

レントゲンの結果は思ったより悪く、整形外科医と疼痛クリニックの2箇所へ紹介、その紹介の為にCTにも行ってもらわないといけない、、、と許可を貰いに電話を入れたのだ。

そう、治療計画は必ず患者の意思を反映させなければならない。成功の確率、危険度、どんな事をするのか諸々。その時彼女が言ったのが始めの言葉だ。

おそらく現代の医療ではどうにもならない彼女の病状。それでも一時の案楽を与えるのが薬でも手術でもなく、誰かにケアしてもらっている安心感。NPになって本当に良かった。